【往還集126】10 さよなら、「白鳥」

「白鳥」終刊号が届いた。冒頭に「「白鳥」終結宣言」がある。発行人成瀬有が2012年11月18日、収縮性心膜炎で死去。8年まえに食道がんを患い、以来の養生だった。成瀬は同年の歌人ゆえ、仕事ぶりを遠望しつつ、励まされてもきた。自分が釈迢空を調べていたとき、共同研究『迢空百輪講Ⅰ』を随分参考にさせてもらった。『輪講Ⅱ』も読みたい、刊行の予定はないかと問い合わせたら、そのうち機会をみつけてという返事だった。それが終刊号と一緒に送られてきた。これが最後の、貴重な仕事だ。
同年者の死は、こちらが置いてけぼりをくったようで殊更に寂しい。
が、「嘆いてどうする、そんな暇があるなら、やれることをやっておけ」と、逆に叱咤されるに決まっている。
死の前夜まで歌を作ったという。そのうちの1首を引用する。

「秋さぶる気配やや色づくと窓の森いくたびも大きたゆたひ」

さよなら、「白鳥」。
(2013年1月8日)