作品と評論。これはどこか相性が悪いらしく、両方に長ける人はなかなかいない。短歌でも同じことだが、時々両刀使いが出現する。私が密かに期待を寄せている若手男性歌人、それは内山晶太(1977年生)と山田わたる航(1983年生)。
山田の新刊歌集『さよならバグ・チルドレン』をたった今、読み終わった。
40年も歳が離れているというのに、胸にヒリヒリとくるさびしさ、くるしさ、かなしさ、むなしさはどうしたことだろう。
「鉄道で自殺するにも改札を通る切符の代金は要る」
「正月しかみたことのない漫才師みたいに生きてゆけたらと思ふ」
「やはらかなてのひらがすくふ水があるその水がぼくに注ぎ込まれる」
「交差点を行く傘の群れなぜ皆さんさう簡単に生きられますか」
自己破滅には、秋葉原のように暴走するか、きちんと切符を払って鉄道に立つかしかない。この両者はほんの僅差。そういう時代に立ち会っている。
(2013年1月6日)