一夜、薄雪が降る。さらに荒れる予報だったのに風がやみ、日差しいっぱいの新年になった。
こういうときの湖と山は、静かなうえに温もりもある。正月そうそうニンゲンだっていないだろう。
というわけで月山池へ。
ところがなんと、釣り人が20人もいる。新年そうそう殺生とは。もっとも家にごろごろしているよりは、水を眺めていたほうが精神衛生にはいい。
ニンゲンを避けて山へ入る。急坂をのぼるにつれて、木の間に湖の輝きが広がり、はるかには白銀(しろがね)の蔵王も浮かびあがる。薄雪がとけて、茶褐色の落葉が湿り気を帯びる。どこかでツピッツピッと小鳥の声が。あとは無音。あくまで無音。これが冬枯れの山だ。
そのときクマが!とでもなれば、俄然ドラマがはじまるのに、あんなに出没をくり返した彼らもすでに冬眠中。
で、なにごともない、ただの平凡な冬枯れの山。この平凡が本年のはじまりです。
(2013年1月1日)