河北新報社編集局編『再び、立ち上がる!』(筑摩書房)は記者たちが被災各地に入り込んで取材した記録集だ。
大震災関係の出版物は随分多く読み、その度に胸のえぐられる思いをしてきた。今回も同じだ。
「「遺体二〇〇~三〇〇人」、錯綜する情報」の章がある。情報の大混乱のなかに発せられ、事実であるかのように数日間流れたという。実際の荒浜地区の犠牲者は約180人。自分はライフラインの完全にストップした夜、布団にくるまり、夜の明けるまでラジオをつけていた。未曽有の大災害だとはわかったが、具体的なイメージがつかめなかった。
夜もふけた頃アナウンサーが「荒浜に遺体200から300」と告げ、いきなり慟哭した。
この数値を聞いた途端、まさにらち埒もないことが起こったのだと実感し全身が硬直した。同時に、この事態をまえに何もできない無力感に、したたかに打ちのめされた。
(2012年11月16日)