高校時代の漢文専門の先生は杉山先生という熱血漢。漢詩を朗詠するに目をつぶり、あたかも黄河を眼前にする雰囲気だった。おかげで自分も漢詩好きになり、いまでも時々読む。
目下手元においているのは『中国名詩選』3巻本(岩波文庫)。
おうぼん王梵し志の詩にきて、あまりのことに笑ってしまった。笑う漢詩だってある。
「我れ昔未だ生れざりし時は、めいめい冥冥として知る所無かりき。」とはじまり「なんじ你てん天こう公に我れを還さん、我れに未だ生れざりし時を還せ。」と結ぶ。
編者松枝茂夫の訳文を借りよう。「わたしが昔まだ生まれぬ前(未生以前)は何も知らなかった。しかるに天公は頼みもせぬのにわしを生んだ。わしを生んで一体何をしてくれたか。着るものも無く、わしに寒い思いをさせ、食べるものも無く、わしにひもじい思いをさせただけじゃないか。これ天公よ、このわしをお前さんに返すから、わしを未生の時に返しておくれ。」
(2012年11月5日)