【往還集125】 15 STAR BUCKS・トーク

仙台の一番町にフォーラスというビルがあります。ファッションブランドの集合したビルで、地下から上階へと巡るうちに、ファッションの歳時記の真っただ中を行く気分になります。
その2階にあるのが「スター バックス」というレストラン。街に用事があって、疲れるとここに入ってコーヒーを飲んだり、サンドイッチを頬ばったりします。
席は、一番町の見下ろせるところがいい。繁華街を行き来する人々を見て、楽しむことができるのです。自分がこの下を通るときは、眺められる立場になるのに、2階に坐れば今度は逆になる。なんと残酷なんだろうねえとうそぶきながらも、やっぱり楽しむのです。どんな人が通るか。
ブレザーのサラリーマン風の男。仕事時間にしてはのんびりと歩いている。
ベビーカーを押す若ママ。こんな時間に買い物?いや、いまから仕事なので子供を保育所にあずけにいくのかも。
リユックの老夫婦。山グツもはいている。バス停から山へ向かうのかも。
マスクの人もちらほら。目だけの顔って、ナゾがあって皆美しい。
ヘルメットに警棒をもった男二人が直進。金融機関に金の受け取りに行くのだ、たぶん。その他ひっきりなしに人は通り、ひっきりなしに妄想が湧きます。
けれど、不意に「だれも、だれもが知らない人ばかり」と気づき、ガクゼンとなる。あふれるほどにいっぱいだというのに、自分とつながりのある人はナッシング!
私はとっさにひとつの歌を思い浮かべます。それは志垣澄幸氏という宮崎県の歌人が『東籬』収めた一首。

「三階のわがゐる窓にたれもたれも気にとめず街の人らゆきかふ」

いま、自分の覚えたガクゼンが、冷静にしかも的確にうたわれている。断絶感、孤独感が大仰でなく、ふつうにうたわれている。
そう、これはふつうなことなんだ、考えてもどうにもならないことなんだ。
――と考えながら、コーヒーをすすりこむのです。
(2012年10月24日)