家の周りの紅葉は、桜の葉からはじまる。朝夕の寒気が増すにつれて、緑がしだいにくすみ、やがて赤みを帯びでいく。
そのとき、つまり、まだ緑を残しながら赤を加えていくときの色合いには、いつも魅了される。
この桜もみじ色のセーターを編みたいものだと、毛糸をさがした。毛糸屋さんを見つけるたびに入るが、「これ!」と納得するのは、まだない。
もしかしたら、桜もみじそのものを染料にしてたらどうだろうかと調べたこともあるが、そうはいかないこともわかった。でも、まだあきらめきれない。
「それ、どんな色?」と聞かれたら、「桜の葉の緑色に赤みが加わって、緑を終りながらも完全な紅葉にもならない、その中間の冴えないけれども、光の当たりぐあいでは荘厳なまでに輝く、そういう色だよ」と説明するほかない。桜もみじの下に行って「ほら、これさ」と指差すのが、いちばん手っ取り早いのだけれど。
(2012年10月22日)