【往還集125】 11 フェードアウト

「往還集」124に演劇人石川裕人(ゆうじん)氏を取り上げた、「東北はなめられている」と。彼の作・演出の「方丈の海」を見に行ったのは8月2日。開演のまえに本人に会って立ち話もした。彼には賢治に取材した劇も少なくない。花巻でも上演したいと意欲的なので、イーハトーブ館の舞台を紹介しようということになった。
ところが今朝の新聞、石川氏の訃報である。死去は11日午後1時、肝細胞がん、59歳。入院したのは9月下旬、「このままフェードアウトしないから」といい残して。再起の意志は十分にあったのだ。「方丈の海」の最終公演は9月8日だから、それをやり遂げての入院ということになる。荒削りながらも骨太い、いかにも石川演劇らしい作だった。
このようにまだまだ余力をのこしたまま「あちら」へ拉致される知人を何人ももってきた。このフェードアウト(溶暗)、拉致でなくて何といったらいいのだろうか。
(2012年10月13日)