【往還集125】 6 クマよけ

クマの出没がいつになく多い。家からかなり近いところでも、姿を現している。木の実が不作であるうえに、ニンゲンへの恐怖感をしらない世代が増えたためといわれる。
こちらは秋も深まってくると山を歩きたくなる。で、「森と手帳」とクマよけを入れたバッグを肩にして散策をはじめる。
ところでなぜクマよけを鳴らすか。「クマに出会わないように」がすぐに出てくる解答。ところがじつはちがう。クマよりも怖いのは銃をもったニンゲンだ。獣とまちがえられた発砲事件がよくある。だからクマよけを鳴らす。
詩誌「左庭」23号を読んでいたら、山口賀代子さんの「けものみち」があった。「気がついたときには猟銃をさげた男が目の前にいた」と書き出している。「怖いのだ/熊と出会うことよりも/獣と間違えられ銃でうたれることが」かくして「猟解禁 注意」の立札が出る。
その通り、こわいのはクマよりはハンターなり。
(2012年10月5日)