松平修文は日本画家であり歌人でもあるが、若い日には俳句も詩も書いた。今回11歳から19歳にかけての詩を一冊にまとめた。
その冒頭詩「池のほとりで」は、「犬が死んでいる/水にうつる夕陽の/照りかえしを浴びて」とはじまる。この早熟すぎる不吉さには思わず「うーん」と呻ってしまう。
松平の短歌はどことなくシュールで、ローマン的でありながら不吉でもある。そのルーツが少年の日に(ということは幼年の日にも)あったわけだ。
彼は、この地上にどのようにして足を降ろしたらいいか皆目わからない少年だった。長くつらい自問の末に、「人生に意味があるか ではなく/人生に意味がある と決めて/その理由を考えることを/人生の課題として/生きる他ないらしい」(「課題」)と語るにいたる。
このときまだ13歳。少年の日の武器なき戦いが、痛々しい。
こうして危うい淵から、辛うじて這い上がろうとしていた。
(2012年9月16日)