終戦の日が近づくと「ビルマの竪琴」をみるのが習慣になった。原作は竹山道雄。映画化されたのを最初に鑑賞したのは中学のとき。その後、市川崑監督の手でリニューアルし、主役も中井貴一となった。いまみているのはこれのほうだ。
日本の敗戦そして捕虜生活。やっと帰国できることになるが、異国に倒れた同胞を葬ろうと、ビルマに留まる水島。
青年らしい一途さ、潔癖さ。
もし、自分も同じ立場になったなら、水島でありえただろうかと何度も自問してきた。高校時代も、学生時代も、社会人になってからも。その折々に、黄色の僧服の水島が直立姿であらわれる、オウムを肩に、竪琴を抱いて。
図らずも今回の大震災で、何人もの〈水島〉を知った。
そのなかの幾人かは美談となって人々を感動させたが、多くは無名の〈水島〉となって果て、辛うじて生の側に残された人も、何事もなかったように生活をはじめている。
(2012年8月15日)