【往還集124】34 「賢治短歌の謎と魅力」

宮沢賢治学会の夏季特設セミナーでは賢治短歌をとりあげ、四年継続してきた。
そのコーディネーターの仕事も今回で終わり。7月28日、29日の両日を無事終了して一息ついたところ。
1日目は賢治研究会の中谷俊雄、大角修、長沼士郎、赤田秀子、古澤芳樹各氏に登場いただいた。いずれも東京圏の方々。4年間にわたって賢治短歌の読書会をやってきた、その風景を壇上で再現してもらう。たとえば

「酒粕のくさるゝにほひを車ひく馬かなしげにじつと嚊ぎたり」
「蛭がとりし血のかなだらひ日記帳学校ばかま夕暮の家」

について、忌憚のない、熱のこもった議論をハッシハッシと交わす。
私は途中で気付いた、もしこれが詩や童話だったなら白熱した意見をぶつけあうことはない、短歌だから可能なのだと。もちろん、賢治の歌が謎を埋蔵していることが前提としてある。
このことに気付いただけでも大きな収穫だった。

(2012年7月30日)