【往還集124】25 ずたずた

フクシマもミヤギもイワテもなめられている。もし原発が本当に安全なら、なぜ首都圏に作らないか、フクシマに作らざるをえないとしても、なぜ東電幹部や政治家は原発地帯に住まないのか。石原都知事だって尖閣諸島よりもまず原発地帯を買い上げるというべきだ。
「なぜ」の理由は見え透いている。
要するにイナカをなめ、同情するふりをして「こちらでなくてよかった」と胸をなでおろしているのである。
だから私も、「東北はなめられている」と一度は声を大にしていっておく。そのうえで頭を冷やして考えたい。
3・11以後、圏内・圏外はずたずたになった。圏内ですら昨日までの隣人たちはずたずたになった。逃げるものと逃げられないものもずたずたになった。
ずたずたに直面し、ずたずたにまみれながら、どのように自分を立たせていくか。個々の生を直接に賭けた、倫理、哲学、宗教、思想――がここにはじまった。 (2012年7月4日)