もう4月8日になるというのに、午前中は雪だ。珍しいことに、綿雪。風のない空間をゆっくりゆっくり回転しながら、妖精のように降りてくる。
やがて止み日ざしが遠慮がちに広がる。申し訳程度の春の兆しながらやはりうれしい。 こういうときは湖へ行きたくなる。
そこで、サイカチ沼。
沼を右折してさらに奥へ。「名取川水源」の標識が立つ。水源にはつり橋があって、歩を進めるたびに、木が軋む。
橋の半ばに立ってみおろす。青みがかった水底には、ひと冬の枯葉が堆積している。両岸の木々、空の光と雲が水面に映え、彼方へとつづく。あたかも水彩画のよう。
去年の3・11以降、ここには何度も来ている。そのたびに、時間のことが思われる。なにもかもが、つい昨日のようでありながら、ずいぶん昔のようでもある。どちらが本当なのか、うまく焦点を結ばない。
時間の尺度が、ダリの絵のように解けてしまっている。
(2012年4月8日)