

閖上大橋を渡って、荒浜へ。道路の信号は全て止まったまま。コンクリートの土台が、集落の面影を辛うじて残す。が、田畑の瓦礫はほとんど消えて、巨大な校庭のように整地されている。
復旧への大きな一歩—-のはずなのに、心のほうが置き去りにされた空虚感が。破壊されつくした家屋や車の凄惨さに、胸潰れんばかりの衝撃をうけたというのに、これはどうしたことだ。
いまにして思えば、瓦礫は瓦礫なりに人間側に属していた。それすら全て奪われて、完全な無機の世界になってしまった。
防潮堤に立って、ここにも花束を。砂浜もすっかり片付いている。午後の海の、なんという静けさ。雲の切れ間から、日差しが放射される。彼方には仙台港がある。そこからいま、大型客船が白色の船腹を反照させて出てきた。
「なにごとかあったなんて、みんなウソ。昔からなにごともなかったさ」海は、聞きもしないのにいう。
(12月7日)