宮城県美術館の「フェルメールからのラブレター展」へ。手紙を書いたり読んだりする女性像の幾枚かがある。
そのまえに立っていて連想されたのは、志賀直哉「赤西蠣太」。この作家を私はずいぶん長く忘れてきた。
玉城入野氏が発行する「イリノスケッチ」第6号を読んでいたら、「散文民報(六)」に志賀直哉「焚火」が秀逸な作品としてとりあげている。それに刺激されて実に実に久しぶりに短篇集を読み、志賀の文章力に改めて舌を巻いた。
「赤西蠣太」も名品中の名品。仙台坂の伊達兵部の屋敷に仕える醜男の赤西が、策略で小江(さざえ)という美しい腰元に艶書を届ける。当然断られるだろう、それを恥として逃げ出そうという魂胆だ。ところが以前から好意を感じていたという返書が届く。
以下に展開されるのは、あまりに清く美しく、しかし悲しいドラマだ。詳しく知りたい方は、どうか実物をお読みください。
(11月16日)