田村雅之新詩集『水馬』(白地社)に「みちの奥の、ひとばめん」がある。
半世紀もまえにみちの奥、つまり仙台に降り立った。その記憶を辿る作品だ。
秋日和の今日、詩集を片手に自分も同じルートを歩いてみた。周遊バスは「青葉通りを左折」「大学正門前を右折」、「霊屋(おたまや)下」の停留所で下車、「広瀬川にかかる橋を渡る、花壇という曲輪の砂岸が見え」と詩はいう。
橋は当時に比べたら広く立派になった。東方にはビルが城壁のように聳え立ち、天文台も移転した。
ただし「左脇に運動場」があり、銀杏の木が聳えるのはそのまま。上り階段も魯迅下宿の建物も現存している。とはいえ木造家屋はいまにも崩壊しそうで、一部はビニールシートで覆われている。
田村氏は「夢の出口にさしかかった不思議な自分を発見する」とうたう。
かくいう自分も、夢の入口から夢の出口へ抜け出たような不可思議さに、しばしとらわれた。
(10月28日)