鷲尾賢也『編集とはそのような仕事なのか』(トランスビュー)は、先輩編集者が後輩編集者を指南する、入門書かつ実用書の体裁をとった本だ—-と思って読 んだら、そのような域をこえた人間論また人間関係論でもあった。編集とはどういうものか、どういう心構えが必要かを直接には説いている。しかし「まず旺盛 な好奇心の持ち主でないといけない」「編集者に専門などない。素人の代表である」「自尊心が強く、プライドの高い人には向かない」になると、人間関係の在 り方を深く見据えていることがわかる。
そしてこれらは、編集のみならず、多くの面にも応用できる。原稿を依頼するときの心構え、「よい手紙は説得のための強力な、かつ確実な武器になる」も、経 験の積み重ねからきている。「手紙は万年筆で書きたいものだ」になると、さすがに細かすぎる気もするが、しかしここにも、たしかな経験が働いている。
(10月13日)