【往還集121】44 「花巻へ 2」

花巻のホテル・グランシェールから見下ろすと、不可思議な交番と道路の構図が。

花巻の定宿は、花巻駅前にあるホテル・グランシェール。東向きの上階からは、市街一帯とその彼方の稲田、さらに東方の北上山脈が一望できる。空気の澄むと きには、早池峰山もくっきりと見える。直下には、大きい星印を掲げた交番の建物。そこを中軸に道路が二つにわかれる。夜になると灯りがともり、まるで銀河 の国に迷い込んだ気分になる。霧の朝はさらに幻想的な雰囲気になって、見飽きることがない。一日の行事に疲れ、ホテルにもどり窓外を眺めていると、十一年 の歳月があっという間だったと思われてくる。賢治学会の理事になったのは二〇〇〇年のこと。四年やって、四年休み、再び公選されて、三年目。任期はあと一 年。人には退きどきがある。たとえまた公選されても、次の若手の出番を妨げないように、そっと消え去ることにしよう。窓外の景とも、やがてはお別れだ。い ま、黄金色の田園が広がる。放射能に汚染されていませんように。
(9月22日)