【往還集121】27「再び、荒浜へ」

荒浜。砂浜の廃材が山と積まれている。

 方言で、盆の終わりを「お帰り(おげえり)」という。そのオゲエリも過ぎてやっと平常になったところで、再び荒浜へ。一か月まえは賑わしかった重機の音 がほとんど絶え、森閑とした空間が広がるばかり。瓦礫の大方が搬出されたためだ。荒浜小学校も四方が柵で囲まれ、立ち入ることはできない。校庭にはバイ ク、車、農機具のスクラップが積まれている。まだ処置されずに残っている家屋はあるが、一家が壊滅したためにちがいない。海岸のゴミも片付けられ、小山に なって彼方まで続く。防潮堤のひとところには花と線香が。私も焼香して、額を垂れる。膝を屈して、しばし立ちえない。こうして津波の痕跡は、消えていく。 3・11以前の、いつもの青海に戻っていく。やがては、死者の面影すら消えていく。復興とは死者を乗り越えること—-とはわかっている。だのに、この胸を 咬む寂寥は、やりきれなさはどうしたことだろうか。
(8月17日)