【往還集121】22「雑草」

 猛暑が一段落し、低温と雨がつづく。また猛暑がぶりかえしてくる。この間、まわりの雑草はどんどん伸びて、人間界をおびやかしはじめる。また除草しなけ ればと、外を眺めやっていたときのこと。カヤクサがスンスン丈を伸ばし、細長の葉を左右にひろげ、尖端に若い穂を出ている。そのあまりに均整のとれたすが たに、つくづくと見とれてしまった。威厳さえある。カヤクサだけではない、ヒエクサもヨモギもツユクサ、クズにいたるまで、すがたかたちはちがうものの、 それぞれに美しい。地球が誕生して以来、生命が生まれ、長い時間をかけて変化し、磨きをかけて現在のすがたに到達した。だのに〈雑草〉とひとからげにし て、引っこ抜くことばかり考えていたとは。これは、どんな生産性もない感傷であり、語るもヤボである。そんなことは、とうの昔にわかりきっている。わかい きっているけど、美しいものは美しい。
(8月7日)