【往還集121】8「ブランコにのっていたのは」

 6月26日、仙台文学館で第14回「ことばの祭典」があった。短歌、俳句、川柳部門が集結し、同じ題で 即吟する。3分野の垣根を飛び越えて作りあうという、おもしろい催しなのだ。レギュラー選者は高野ムツオ、雫石隆子各氏と私で、そのほかに毎年招待選者を 依頼する。今回の題は「窓」「動く」。選考が終わって、一堂に会し、いよいよ発表というときに、俳句選者の山西雅子さんが川柳の一句を読んで、涙を流しは じめた。笑うならともあれ、川柳に泣くなんて。
百箇日過ぎてブランコ動き出す
これがその句。百箇日といえば、死者を送り終えてほっとする時期。公園に子どもたちが戻ってきて遊びはじめるーー。しかしもしかしたら、亡くなった子ども が幻となってやってきて、ブランコをこいでいるのかもしれない。川西さんは、後者の解釈をして涙を抑えきれなくなったのだった。
(2011年7月5日)