「波濤」7月号は、第12回民子賞の発表。受賞したのは柿沼寿子「色なき街」30首。私は一読して、今回の震災詠では第一級の力作であると確信した。柿 沼さんは名取市ゆりあげ閖上で被災し、家屋を奪われる。避難所生活の日々、膝の上にダンボールをのせて歌稿を清書したという。
茫然としてゐるうちに暗くなり見知らぬ児童と身を横たふる
屋根の上にながらへて泳ぎ来し人の寒かりしとのみ言へり小声に
悲しくても笑ふ習性このご期に及び行列の人らうす笑ひせり
色なき街 いや色はあり灰のいろ砂のいろ枯死のさうもく草木のいろ
水が欲し 死にし子供の泥の顔を舐めて清むるその母のため
苦手なりし肩組む 抱き合ふ 手を繋ぐ 今はしてゐる生きながらへて
(2011年7月3日)